静岡発「命を守るカルタ」がルワンダで防災教育に貢献、国際的な「学び合い」を実現

「PEACE 防災カルタ」の制作背景

「PEACE 防災カルタ」は、2026年7月18日に浜松市、19日に静岡市で開催された「PEACE 防災カルタ2026」において制作されました。この制作には、日本、ブラジル、インドネシア、フィリピン、中国など、多様なルーツを持つ高校生、小学生、留学生、地域住民が協力して参加しました。

防災カルタ制作の様子

静岡で完成したカルタは、約3週間後に約1万キロ離れたルワンダの地域へ届けられ、子どもや大人が共に「災害から命を守る方法」を考える教材として活用されました。

ルワンダが直面する洪水と土砂災害

「千の丘の国」と呼ばれるルワンダは、緑豊かな丘陵地帯が広がる一方で、急な斜面が多く、豪雨時には河川の氾濫、鉄砲水、地滑り、土砂崩れが連鎖的に発生しやすいという課題を抱えています。特に西部・北部・南部では、豪雨によって住宅や農地、道路、橋、水道、学校などが被害を受け、人々の生活と教育が長期間にわたって中断されることがあります。

洪水で冠水した農地と家屋

2023年5月2日から3日にかけて発生した豪雨では、洪水と土砂災害により131人が死亡しました。ルワンダ政府は、住宅だけでなく道路、橋などの公共インフラにも大きな被害が生じたと報告しています。また、国連開発計画(UNDP)によると、この災害では1万8,000人以上が避難を余儀なくされ、3,000ヘクタールを超える農地が被害を受け、学校や病院、水力発電施設なども損傷しました。

災害は一度限りではありません。ルワンダ緊急事態管理省の2024年報告では、年間に59件の洪水が記録され、12人が死亡、25人が負傷したほか、農地、道路、橋、送電設備などに被害が発生しています。さらに、2026年4月に国連児童基金(UNICEF)が公表した情報では、ルワンダ国内で326カ所の災害リスク地点が特定され、そのうち134カ所が「高リスク」または「非常に高いリスク」に分類されています。これらの地域では、3万1,000人以上の生活が洪水や土砂災害の危険にさらされています。

洪水で浸水した地域で復旧作業を行う人々

洪水によって水道施設が壊れると、安全な水を確保するために長距離を歩かなければならなくなり、子どもが水くみに時間を取られ学校へ通えなくなることもあります。医療施設では、衛生管理や感染症予防が困難になります。洪水は、雨がやんだ時点で終わる災害ではなく、教育、医療、食料、仕事、交通、衛生など、地域を支える「仕組み」全体に影響を与える災害です。

カルタを囲み、子どもと大人が共に考える防災

今回の授業が実施されたMiyove地区は、なかよし学園が継続的に教育支援を行ってきた地域です。授業では、静岡県の参加者が描いた防災カルタを机の上に並べ、読み札の内容を確認しながら、災害時にどのような行動を取ればよいのかを考えました。

防災カルタを使った授業風景

カルタには、避難場所の確認、水や食料の備蓄、危険な場所からの離脱、身体の保護、家族や周囲の人との助け合いなど、日常の備えと災害発生時の行動が描かれています。文字だけでなく絵を見て、札を探し、身体を動かすことで、年齢や言語、識字力の違いを越えて誰もが一緒に参加できます。遊びの形式を取り入れることで、防災が「難しい知識」ではなく、自分と家族の命に関わる身近な問題として捉えられました。

参加者たちは、札に描かれた絵とメッセージを一枚ずつ確認し、「なぜこの行動が必要なのか」「自分たちの地域では何が起こり得るのか」を話し合いました。日本で作られたカルタをそのまま覚えることを目的とせず、カルタを対話の入口として、ルワンダの生活、地形、災害経験に合った備えを地域の人々自身が考えることが重視されました。

防災に関する講義を受ける人々

防災は「誰かが助けに来るまで待つこと」ではない

授業では、防災を地域社会の「SYSTEM(仕組み)」として捉える学習も行われました。災害そのものを完全に止めることはできませんが、危険な場所を知る、雨や河川の変化に注意する、避難場所を決める、家族で連絡方法を確認する、子どもや高齢者を誰が支えるか考えるといった準備によって、被害を減らすことは可能です。

一つひとつの小さな行動が正しくつながることで、地域全体の防災力が生まれます。支援が届くまで待つだけでなく、住民自身が危険を理解し、周囲の人と協力しながら判断し、行動する力を育てることが、災害による被害を減らし、地域の未来を守ることにつながります。防災カルタは、答えを一方的に教える教材ではなく、地域の中で命を守る仕組みを話し合うための教材として活用されました。

ワークショップに参加する子どもと大人

一方的ではない「学び合い」のモデル

今回の取り組みで、なかよし学園が特に重視しているのは、日本からルワンダへ防災知識を一方的に伝えることではありません。ルワンダで洪水や土砂災害と向き合う人々は、急斜面での暮らし、限られた道路や水道設備、避難後の生活、農地や家畜を失うことの影響など、日本とは異なる災害経験を持っています。その経験を日本へ伝えることも、重要な防災教育です。

日本でも、台風や集中豪雨、河川の氾濫、土砂災害が毎年のように発生しています。避難所や防災設備が整備されていても、「自分は大丈夫」と考えて避難が遅れることや、災害によって水道、道路、学校、医療が同時に機能しなくなる危険性があります。

水運びをする村の人々

ルワンダで起きている洪水を知ることは、遠い国の被害を知るだけではありません。「もし道路が使えなくなったらどうするのか」「安全な水が何日も手に入らなかったらどうするのか」「学校や病院が被災したとき、地域で誰を優先して支えるのか」といった問いは、ルワンダの現実が日本に暮らす私たちに、災害後の生活を具体的に想像し、現在の備えを見直すきっかけを与えてくれます。

日本の知恵がルワンダの命を守り、ルワンダの経験が日本の防災を強くする。これが、なかよし学園が目指す「学び合い」です。

「つくる・届ける・学び合う・還す」のCoRe Loop

なかよし学園は、日本で生まれた学びを海外の教育現場で実践し、現地で得た成果や課題を日本へ還元する往還型教育モデル「CoRe Loop」を展開しています。今回の活動では、以下の循環を実現しました。

  • つくる(Create):静岡県の高校生、市民、外国籍ルーツを持つ参加者が、防災カルタを制作する。

  • 届ける(Deliver):なかよし学園がルワンダのMiyove地区へカルタを届け、防災授業を実施する。

  • 学び合う(Co-learn):日本の防災知識と、ルワンダの洪水・土砂災害の経験を持ち寄り、地域に必要な備えを考える。

  • 還す(Return):ルワンダでの授業、参加者の反応、洪水被害の現状を静岡県へ伝え、次の防災学習と教材改善につなげる。

カルタを届けることは活動のゴールではなく、世界の現場で使い、そこで生まれた学びを日本へ戻し、次の一枚をより良い教材へつくり変えるところまでが、本プロジェクトの防災教育です。

防災に関するディスカッションを行う学生と大人

今後の展開

なかよし学園は、ルワンダで撮影した授業の写真や映像、現地で確認した洪水被害の状況、防災カルタに対する反応を、静岡県の参加者や協力者へフィードバックします。さらに、ルワンダの地域特性や災害経験から得られた視点をもとに、カルタの内容や授業方法を検証し、次の地域・国での防災教育へつなげる予定です。今後も世界各地の学校や地域で防災カルタを活用し、それぞれの地域で起こり得る災害や生活環境に合わせて教材を更新していく計画です。

絵を描くワークショップの様子

ルワンダ実施概要

  • 活動名: ルワンダプロジェクト2026「PEACE 防災カルタ」

  • 実施日: 2026年8月11日

  • 実施場所: ルワンダ共和国 Miyove地区

  • 参加者: 地域の子ども、保護者、住民、現地協力者ほか

  • 主な内容: 防災カルタを活用した災害時の行動学習/洪水・土砂災害に関する対話/平時の備え/地域で命を守る「SYSTEM」の学習

  • 実施団体: 特定非営利活動法人なかよし学園プロジェクト

  • 助成: ふじのくに未来財団「静岡トヨタ自動車 ハイブリッド基金」

  • 国内での教材制作:

    • 2026年7月18日:オイスカ浜松国際高等学校

    • 2026年7月19日:貸し会議室UNIELL(静岡市)

特定非営利活動法人なかよし学園プロジェクトについて

なかよし学園プロジェクトは、「世界とつながる学び(CoRe Loop)」を軸とした探究・平和・包摂教育プログラムの企画運営、および国内外における教育支援、災害支援、食料支援、心のケア支援などを行うNPO法人です。