Trip.comが「インバウンドサミット2026」に登壇、AIによるインバウンド観光の変革を議論

トークセッション登壇者

トークセッションでは、高田智之氏に加え、自由民主党 経済産業部会長の小林史明氏、福井県観光連盟 観光地域づくりマネージャーの佐竹正範氏、アソビュー代表執行役員CEO 代表取締役の山野智久氏が登壇し、日本のインバウンド市場の現状、AI活用の進展、地方観光の持続的成長に向けた重要性などについて活発な意見交換が行われました。

高田智之氏(Trip.com International Travel Japan 代表取締役)

高田智之氏

徳島県徳島市出身。2007年にタイのホテルチェーンでホテル立ち上げに携わり、2010年にはハイアット・オン・ザ・バンド上海に入社しました。その後、国内外で営業戦略を推進し事業成長を牽引。2022年にトリップドットコム・インターナショナルトラベルジャパン ホテル営業部カントリーディレクターを経て、2023年より同社代表取締役社長を務めています。

小林 史明氏(衆議院議員 自由民主党 経済産業部会長)

小林 史明氏

「テクノロジーの社会実装による多様でフェアな社会の実現」を政治信条としています。規制改革やデジタル化、スタートアップ支援、経済・中小企業・エネルギー政策に取り組み、過去にはデジタル副大臣や環境副大臣、自民党青年局長も歴任しました。

佐竹 正範氏(福井県観光連盟 観光地域づくりマネージャー)

佐竹 正範氏

福井県あわら市出身。ヤフーで広報・マーケティング・地方創生に従事後、北海道美瑛町でDMO立ち上げ・CMOを担当しました。2021年より福井県観光連盟で観光DX・データ駆動型マーケティングを推進しています。紀尾井町戦略研究所上席コンサルタントも務めます。

山野 智久氏(アソビュー代表執行役員CEO 代表取締役)

2011年にアソビュー株式会社を創業。「レジャー×DX」をテーマに、遊びの予約サイト「アソビュー!」や、観光・レジャー・文化施設向けバーティカルSaaS「ウラカタシリーズ」を展開しています。経済同友会観光戦略委員会委員長、一般社団法人 日本車いすラグビー連盟 理事長も務め、著書に「弱者の戦術」(ダイヤモンド社)があります。

日本の観光市場とAI活用について

インバウンド市場の現状と課題

高田氏は、日本が世界的に人気の高い観光地であり、インバウンド需要は引き続き強い状況にあると述べました。一方で、北アジアを中心に旅行先の選択肢が広がっており、リピーター層の旅行動向に変化が見られることを指摘しました。日本が継続して魅力的な旅行先であり続けるためには、新しい体験や選択肢を提供し続けることが重要であるとの見解を示しています。

観光分野におけるAIの役割

小林氏は、人口減少が進む日本において、生産性向上と付加価値向上が重要であり、その手段の一つとしてAIが挙げられると述べました。観光政策も「人数を増やす」から「消費額を増やす」質重視へとシフトしており、AIのデータ活用によって観光客を地方へ分散させることが重要であると強調しました。

佐竹氏は、観光分野でのAI活用には「観光地の基本データ」と「観光客の志向データ」を整理し、AIが活用できる形にすることが重要であると指摘しました。実際にデータを可視化することで、宿泊事業者が価格調整やプラン改善を行い売上が向上した事例や、道の駅での仕入れ調整による廃棄ロス削減、行政の業務効率化につながった事例が紹介されました。

AIによる予約・旅行体験の改善

高田氏は、Trip.comのAI旅行アシスタント「TripGenie」が、AIを活用した旅行予約数を前年比で約400%増加させていると発表しました。特に香港、シンガポール、マレーシア、イタリア、フランスなどの旅行者がAIを積極的に利用しており、「TripGenie」のホテル比較機能では予約までのクリック数を約80%削減し、7日以内のAI再訪率も45%増加したことが報告されました。AIは単なる検索ツールではなく、旅行全体をサポートする「旅のコンパニオン」として、旅行体験を支える存在になっていくとの見通しを示しました。

山野氏は、OTA(オンライン旅行会社)のビジネスにおいて、消費者向けのB2CではChatGPTやGeminiなどのAIと競合し、購買データを活用していくことが重要であると述べました。一方で、ホテルなどの事業者向けのB2B領域では、契約や運用、サポートなど人の関与が重要な部分が多く、そこを強化して差別化していくことがポイントであると語りました。

データ活用と高付加価値観光商品の創出、観光の分散

佐竹氏は、AI活用に先立ち、まずは観光データをしっかり集めて活用することが重要であるとの考えを示しました。福井県では、県内約105エリアにQRコードを設置して観光客のアンケートを収集し、約9万件のデータをオープンデータとして公開しています。このデータをもとにエリアごとの満足度を可視化し、地域での改善につなげることで、満足度が向上していると報告しました。AIは、これらのデータをさらに分析し、課題の発見や改善を効率化する段階にあると述べました。

観光の分散については、高田氏がビジネスの観点では東京などの人気都市に集中した方が収益は出しやすいと認めつつも、インバウンド産業全体で考えるとそれだけでは限界があるとの見解を示しました。地方には魅力的な宿や体験があっても、プラットフォーム上に情報や商品が掲載されていないケースが多く、旅行者に提案できない状況があるため、全国の宿泊施設との契約を増やし、地域のコンテンツをデータとして可視化する取り組みを続けていると説明しました。都市部だけでなく地方の選択肢を増やすことが、結果として観光の分散や市場全体の成長につながるとの考えを示しました。

AIと観光の未来、インバウンドの展望

AIは今後、観光業界にさまざまなポジティブな変化をもたらすと高田氏は予測しました。技術の進化により、旅行者はこれまで以上に簡単に旅行先を発見し、自身の興味や関心に合った旅を計画できるようになるでしょう。また、旅行スタイルも変化しており、若い世代では公共交通機関を利用した移動が一般的になり、イベントや文化体験、ファン活動など、明確な目的をきっかけに旅行をする人が増加しています。AIやデジタル技術は、パーソナライズされた旅行提案やレコメンデーションを通じて、新たな旅のきっかけを提供し、業界全体で新しい仕組みやアイデアを模索しながら、これからの時代にふさわしい新しい観光の形を生み出していくと述べました。

佐竹氏は、地域事業者の稼ぐ力をデータで支援する中で、一部は自動化できるようになってきたものの、AIでは対応できない地域の現場調整や体験作りは、人の力でしか実現できず、そこが差別化ポイントであると語りました。

小林氏は、推し活の旅行や日本式ネイル・エステなど、まだインバウンドで活かしきれていない地域や文化の資産が多数存在すると指摘しました。AIが自動で点をつなぎ合わせてくれる時代が来れば、これは大きなチャンスであるとしながらも、地域の空手道場や漁港の体験のように、現場の調整やコミュニティとの信頼関係は人の力でしか実現できないため、地域や人に対する愛が試される場であり、そこを乗り越えることが重要であると締めくくりました。

Trip.comについて

Trip.comは、39の国と地域の24言語および35の現地通貨に対応した国際的なワンストップトラベルサービスプロバイダーです。世界220の国と地域にある150万軒以上のホテルと、3,400の空港を発着する640社以上の航空会社のフライト、そして20万以上のアトラクションや現地ツアー商品を網羅した巨大なネットワークを有しています。24時間年中無休の世界水準の多言語カスタマーサービスに加え、エジンバラ、東京、ソウルに設置されているカスタマーサービスセンターから、世界中の旅行者の「最高の旅行体験」をサポートしています。